命令違反

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 敏秋が、こうして惨めに這い出たように。 「ゆき、ね……」  地上に出れば、土砂降りの雨に容赦なく背中を叩かれた。潰れそうに身体が重い。彼女を二度も置き去りにした罪の意識が、敏秋を侵す。  降りしきる雨の中で、彼は一人むせび泣いた。 「ゆきね……雪音、っ――」  生まれつきの茶髪を、きれいな髪だといってくれた。決して愛想がいいとはいえない敏秋を、それでも彼女は慕ってくれた。  それなのに自分は、なにもしてやれなかった。
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