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あれから、私は死にたいと思った。自分の告白よりも早く、ラジオで街中に、あれが放送されてしまったから。こんなに恥ずかしい思いは、後にも先にもないことだろう。
ところが、八重は不思議そうな顔をしていた。
「え?今更?」
どうやら、私はここで大きな思い違いをしていたことを思い出した。八重は、朴念仁という訳ではなかった。というより、ドランスファミリーが根本的な原因だったようだ。
朝、私は八重を一時的に忘れていた。その時はすぐに八重のことを思い出せたつもりでいた。だが、その記憶は完璧ではなかった。肝心の部分が抜けていた。
私はすでに、八重に告白をしていた。八重に関する記憶が一時的に消された際に、肝心の部分だけ戻るのに時間が掛かっていたようだ。
「いやー。様子がおかしいと思ってたんだよ。稲葉っちゃん。いつもより、妙に八重に対して、緊張していたろ」
「私もおかしいと思ってたのよ。いくら、色里が用意した稲葉と八重のラブメモリーが盗まれたからって、あそこまで必死になるのとは」
「こっちは、いつも二人のバカップルぶりに悩まされてきたからね」
その言葉を聞き、私の独り相撲だと悟り、余計に恥ずかしくなった。八重のあの態度は、恋人として普通の態度だったと知ったからだ。
「何なんだよー!」
全てを思い出し、知った時、私は一人で叫ぶしかなかった。
あれから、二つの捜索が行われた。一つは、ドランスファミリーだ。ファーザーである龍を含め、ファミリーは全員、どさくさに紛れて逃げたらしい。いつもながら、素早い動きだ。ただ、一部の目撃者の話では龍は藤咲や不破に縛られていたという話もある。それも仕方ない話だ。あれを、本気で事務所のところの弱点だと思って持ち逃げしていたのだから。その結果が、あれでは報われもしない。
もう一つは・・・あれ?何だっけ・・・。何か言っていた?いや、何も言っていないわよね。
とにかく、ドランスファミリーはしばらく動くことはできないことでしょう。その間は、平和が続くというものだと私は信じている。
だって、私には色里、碧、桐島、八重の仲m・・・。
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