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3日後―――
「唯ちゃ~ん。学会ありがとうねっ。おかげで千咲も萌花も大喜び!はい、これお土産。チョコクランチに、凛ちゃんにはダッフィーのポシェット。琉成くんにはモンスターズインクの帽子。唯にはプーさんのハンドタオルと手帳とボールペン!直人には…あ、買うの忘れた。クランチでも食べさせて」
休憩室のテーブルの上にディズニーランドのお土産を広げ、休日を満喫した綾子が上機嫌に声を弾ませた。
「こんなに沢山!?可愛い~っ、ありがとう。凛と琉成も喜ぶよ。…あっ、これ早速使おっ」
私は大好きなプーさんのボールペンをカチカチと鳴らしながら、綾子が外来スタッフのお土産として購入したチョコレートを一粒口に入れた。
「で、学会はどうだった?」
綾子はペットボトルの烏龍茶を飲みながら長椅子にもたれ掛った。
「えっ!?…どうだったって?」
「…だからさ、内容よ。役に立つような内容だった?ドクターが多い学会だったから、難しかったでしょ?」
綾子の言葉で、一瞬にして頭の中の映像が水島先生と過ごした時間に切り替えられた。
「う、うん。難しかったけど、何てこと無かったよ。メモもバッチリで、そりゃもう有意義な1日を過ごさせて頂きましたよ」
私を見つめる親友の視線に変にドキドキしてしまう。焦る気持ちを隠し、澄まし顔で余裕の笑みを浮かべて見せた。
「そうなんだ。なら良かった。…あ、受講料の3000円は私が持つよ。あんたの貴重な休日を1日潰しちゃったからさ」
ヴィトンの長財布からお札を取り出そうとする綾子。
「えっ!…いや、それは返さなくていいよ」
野口英世の顔が半分こちらを覗いたところで、私は親友の手を止めた。
「へ?…何で?あんた、行く前に受講料が高いって文句言ってたじゃんか」
「あ~…そうだっけ?とにかく、今回はいいよ。もう払っちゃった事だし、お土産いっぱい貰ったし」
それに…
後半戦はほとんど頭に残って無いし…講演内容。
なんともバツが悪い気持ちに駆られながら、口に残ったチョコの甘さをお茶で流し込んだ。
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