深海魚と幽霊。

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道に道路標識があるのなら、僕の学校生活にも標識があってほしかった。どこをどう進めばどういう場所にたどり着けるのか簡単にわかることができれば、どんなにいいだろうかと、僕は一人、思うのだ。 どこかで間違ったかなんてとっくの昔にわかっていたけれど、道からはそうそうに脱輪し、道無き道を進んでいたのだから、そういう自分がカッコイいのだと勘違いした馬鹿野郎がいたわけで、それがいい感じに周りに悪影響を及ぼした。 この世界が小説だったらいい。 そんなイタすぎる妄言を吐いてしまい、実際にそれを想定した生活を送っていた。 空から女の子が降ってきたらちゃんと受け止められるように身体を鍛えようとして挫折。(辛くて三日でギブアップ) 秘密結社にさらわれたときのために、銃のあつかいの真似事をしてみて挫折。(ご近所のおばさんに誤解されたあげく、失笑された。できれば笑い飛ばしてほしかった。大笑いしてほしかった) 自分が転生した時のための計画書を作成(その後、転生してしまったらそのノート、持ってないし、一言一句、覚えている自信もなく、持ち歩く勇気もなかった)etc.etc.etc.etc. と、究極の黒歴史を生産し続け、挫折をし続けた頃にはもう、周りの連中からめちゃくちゃイタくてバカな奴という認識をされており、友達もいなかったのだ。本当に道路標識みたいに進むべき道への看板があったらよかったのに、まぁ、あの頃の僕ならそんなこと信じたりしないで突っぱねて黒歴史の生産をしていただろうけれど、そんなことよりもだ。 僕は高校生になり、教室では深海魚のようにひっそりと生きていた。いわゆる、階級の一番下、居ても居なくてもなんの意味もなさそうな奴に成り下がっていた。 正直に言えば、怖かったのだ。あの頃の自分を暴露されるのが、傷口を抉られるのが、とても怖かった。 なら、最初から階級の下階層に身を沈めて深海魚になっていたい。無理に自分を周りに合わせるくらいなら、最初から僕は根暗なんです、ボッチなんですと宣言しておいたほうがマシだ。 そんな奴を相手するのはそうとうな奇特な奴か、お人好しに違いない。漫画じゃねーんだからそんな奴は現れたりしないし、面倒見のいい幼なじみだっていない。 漫画じゃない、現実だ。そう、現実なのだ。現実であってほしいと思いつつ、漫画のような主人公になりたいとも思っていたのだ
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