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首の上?
自然と、ドラゴンの首の上に目がいく。そこには、
「……冗談だろ、おい。」
そこにいたのは、美しい少女。背中まである流れるような黒髪に、藍色の瞳。目は吊り目で鋭く、それでいてどこか優しいまなざしを持っている。
シュッとした鼻筋に、桜色の唇。スタイルも良く、妙な服の上からでもはっきりと凹凸が分かる。
異常なまでに整った顔。均整のとれたスタイル。
本当に人間かどうか疑うほどの美少女が、指から血を滴らせながらドラゴンの首に跨っていた。
そんな美しい姿とは裏腹に、少女から感じる魔力は異常だった。
さっき俺の横を飛んで行ったのは、エターナルドラゴンの頭部だろうな。
この状況から察するに、エターナルドラゴンの頭部を飛ばしたのは彼女で間違いない。
「正直、信じられねえが。あの魔力量なら納得だな。」
どうする?目的達成とは言えないが、討伐対象はもう死んだ。王女と騎士も無事だ。ここから先、危険な魔物が出ることもないだろう。
だとしたら、あの少女をどうするか。
危険な人物という可能性は排除していい。騎士と少女が会話しているが、会話から危険要素は見当たらない。
……捕まえて、親父に相談しよう。荒いやり方ではあるが、野放しにしておく訳にはいかない。
「っと、動き出した。さて、気配消してっと。」
幻魔法で気配を消し、結構なスピードで駆けていく少女を追った。
「で、いざ捕まえようとしたら返り討ちに遭いました。はい。」
「なるほどな。ふむ、納得した。約束通り貴様を不審者と呼ぶことはやめよう。」
「アリガトゴザイマス……」
話は理解できた。要するに、依頼を達成するべく目的地に向かったら、我というイレギュラーが発生しただけだ。
「では、貴様の名前を教えてくれないか?我の名は灘木柚蔓だ。」
「へっ?あ、ああ。俺はアスク・レリオラだ。」
「そうか。よろしくな、レリオラ。」
笑いかけながら、今だに地面に座り込んでいるレリオラに手を差し伸べる。さすがに股間のダメージももうないだろう。
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