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「……っ……お…ぁ……よ、よろしく。…………って、名前言っちまったああああああ!!!」
顔を赤くして、手を取ったかと思えば突然蹲り、叫ぶレリオラ。忙しい奴だな。
む、もしかすると、こいつは名がアスクで姓がレリオラか?地球でいう英国やアメリカのようなものなのだろうか。
いや、そもそも会話できることすら可笑しいのだが。ここが異世界なら、日本語として聞き取れるのは可笑しい。
やはり、分からないことだらけだ。これも後々原因を探るべきだな。
とりあえず、今やるべきことは、
「レリオラ。我の話を聞いてほしい。」
「へっ?……あ、あぁ、どうした?ナダギ。」
顔を上げ、こちらを向くレリオラ。まあ、名で呼ぶのはもう少し仲が良くなってからでいいだろう。
「我には、自分の名前以外の記憶がない。」
「ひょ?」
「正確には、この世界での記憶がない。」
レリオラには、本当の事を話すことにした。といっても、推測も入っているのだが。
「この世界での記憶?どういうことだ?」
こちらの雰囲気を察したのか、真面目な声色と顔で疑問を投げるレリオラ。それに応えるべく、口を開く。
「我は今までの人生を違う世界で生きてきた。こことは違い、魔法ではなく科学が発達した世界だ。その世界には家族もいれば、友もいた、親友と呼べる仲の人間もいた。」
「………………………」
レリオラは口を挟むことなく、左手で口と顎を隠し、何かを考え込むようにして我の話を聴いている。
口を挟んでこないならば、こちらとしても一気に話せるから良し。
「毎日を平和に過ごしていた。それなりに友達もいたからな、寂しいこともなく本当に平和に過ごしていた。だが、ある日我は死んだ。車に轢かれそうな少女を庇ってな。」
「待て、質問させてほしい。車とはなんだ?」
「ん?ああ、すまない。そうか、この世界には車はないのか。そうだな……まあ、この世界でいう馬車のようなものと考えてくれて構わない。」
「了解した。続けてくれ。」
「うむ、では続けよう。といっても、もう終わりだがな。
車に轢かれ、意識が飛んだ。記憶はないが、そこで我は死んだと思う。車はかなりのスピードで走ってきていたし、かなり大型だったからな、人間が耐えられる衝撃ではない。」
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