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「で、だ。本題を話させてもらう。今の話で分かったと思うが、我には行く当てがない。この世界では衣食住を成立させるにはどうすればいい?どこで働けばいい?それを我に教えてはくれぬか?」
「衣食住の成立ねぇ。まあ一番手っ取り早いのはギルド登録だが。」
そこでレリオラはさきほどのように手で口と顎を隠し、また何かを考え込む。
ギルド。思い浮かぶのは、モンスターハントというゲーム。ギルドという場所で依頼を受け、それの成功報酬で金銭を稼いだり装備を整えたりするゲームだったな。
あれと同じような物と捉えて良いのだろうか。
「よし、ナダギ。お前さえ良ければだが、ウチのギルドに来るか?」
考えが終わったのか、手を口と顎から離すと、顔を上げレリオラはそう言った。
ウチのギルド。というのは、レリオラ本人、もしくはレリオラの親御がギルドを経営していると取っていいだろう。
いや、ただ単にレリオラが所属しているギルドなだけかもしれんが。
まあ、それは置いといて。ギルド登録すれば衣食住の成立が可能らしい。
ならば願ったり叶ったりだ。ここは遠慮なく厄介になろう。
「そうだな……うん、そうしてくれると助かる。」
自然と笑顔になる自分がいる。レリオラには世話になってばかりだな、いつか恩返しせねば。
初対面で殴りかけられたが、今とは大分イメージが違う。
「あいさー……了解。」
何故そこで顔を赤くするのだ。
「えーと、んじゃ、転移するから掴まれ。」
ナダギにそう言いかけ、手を差し伸べる。同時に二人以上の人間が転移するには、術者の身体の一部に触れていなければ駄目だからな。
「転移とはなんだ?あれか?ルーラのようなものか?」
「ルーラ?なんだそれ。」
「む、そうか。世界が違うのだからゲームがないのは当たり前か。」
なんだかよく解らんが、ナダギのいた世界には転移に似たような物があったらしい。
「そのルーラ?ってのはよく解らんが、とりあえず掴まれ。説明は後でする。」
「うむ、了解した。」
ナダギが俺の手を握る。ふおおお、手ぇやっわらか!なにこれ!
って、ちげえよ。何考えてんだ俺は。
「…転移」
余計な気持ちを払拭するかの如く、転移を発動させた。
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