394人が本棚に入れています
本棚に追加
/144ページ
考えろ。どうしたら勝てるのか。
ドラゴンの全身は鱗で覆われている。身体能力が上がっているとはいえ、素手で砕くのは不可能だろう。
出来たとしても、それでは仕留められない。それに攻撃の後はもっとも隙が出来るタイミング。そこを突かれたら終わりだ。
腹は覆われてはいないだろうが、そこに滑り込むのは無理だ。くそっ、なにか方法はないか?
今は騎士達がドラゴンを囲み、時間を稼いでいるが、それも時間の問題。逃げなければいけないはずの姫も腰が抜けて立ち上がれないようだ。
何処か、何処かないか、あのドラゴンを一瞬で仕留められる部位は。
観察しろ。見ろ。観ろ。
「っ!………あれはなんだ?鱗が剥がれて、いや、砕かれている?」
見つけた。唯一の部位を。
首の部分の鱗が一直線に砕かれている。恐らく、斧のようなもので攻撃したが、鱗を砕くことしか出来なかったのだろう。
攻撃する場所は決まった。後は攻撃方法。剣でもあればいいのだが、我の装備は素手だ。
手刀で突き刺すのはさすがに無理があるだろう。ならば刺殺は不可能。
考えろ、殺害方法を。考えろ、あの部分にどうやって攻撃すれば殺せるかを。
引き裂く、千切る、殴る、蹴る、潰す、斬る、抉る。
……抉る?抉る。抉る。
きた。これだ。ビジョンが浮かんだ。殺せるビジョンが、勝てるビジョンが。
例えば、素手で貫くのは無理だとしても、指先ぐらいなら刺さるのではないか。指先を刺したとして、それをどう殺害まで持って行くか。
「………………回転。」
そうだ。指を突き刺した状態で、ドラゴンの首を中心に回転すれば肉を抉り取れる。さらに回転を続ければ、最終的には首を断つこともできるやもしれん。
「正直、馬鹿らしい作戦だが、それぐらいしか思いつかん。やるしかない、な。」
周りは背の高い木々。そしてドラゴンと馬車は少し開けた場所にいる。恐らく、人間が通るための道筋だろう。
というか、道はちゃんとあったのだな。
で、どうやってあの首を掴むか。
ふむ、恐らくだが、全力で走ればドラゴンが攻撃に移る前に指を突き刺し、そのまま首を断つまで回り続けることは可能ではないか?
最初のコメントを投稿しよう!