394人が本棚に入れています
本棚に追加
/144ページ
クリーンヒット。妙な声を上げて、不審者は崩れ落ちた。
股間を押さえ、尻を突き上げている。随分と間抜けなポーズだ。
やりすぎた気がしないでもない。今は女の体だが、元は男だったのだ。股間を蹴られる痛みは分かる。
「潰れたか?」
「潰れるかと思ったわ!!!」
そう激昂する不審者。なんだ、まだまだ元気そうではないか。
「そうか、潰れていないのならいい。さすがに子供を作れない体にしたのでは後味が悪いのでな。」
「潰れててもその程度の反応かよ……」
「先に殴りかかってきたのは貴様の方だろう?我の行なったことは正当防衛だ。」
過剰防衛かもしれんがな。
「くそっ、割と本気で殴りかかったから否定できねぇ」
「ま、この話はもういい。で、質問だが、何故我を尾けていた?それとフードを取れ、人と話をする時は互いの目を見て話せ。それでは我の顔もろくに見えておらんだろう。」
「え、まって、なんでにじり寄ってくるの、ちょ、まt」
不審者が何か言っていたが、問答無用。無理やりフードを取った。
ふむ。これは
「また随分と整った顔をしているな。不審者。」
「あのー、その呼び方やめてくれませんか。」
銀色の髪に空色の目。
やはり地球ではないな、ここは。地球の人間がこんな髪色と目をしているわけがない。
「不審者に不審者と言って何が悪い?いや、もう顔は晒したから不審者ではないのか?」
うーむ。あ、あれだ。まだ我を尾けていた理由が解っていない。
「ふむ、おい不審者。」
「結局やめねえのかよ。」
「勝手に結論をつけるな。我を尾けていた理由を言え、そうすれば不審者と呼ぶのをやめてやる。」
「はぁ…わかった。全部話そう。と言っても、そう大した理由で尾けていたわけじゃないぞ?」
そして、不審者は話し始めた。
股間を押さえたまま。やはり間抜けなポーズだな。
最初のコメントを投稿しよう!