三章

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 会合の時も道端を歩くときもスラム街に居たときも男の視線を浚っていた。  長い髪を断ち切らせ、化粧を施し、ドレスを着せて、指輪までさせた。 「兄さんまで僕の人形を奪う気なのか!」  セルシオはハーティを殴り付けた。ハーティが寝台に飛ばされた。 「セルにいたぶられている彼女を放っておけるわけがないだろっ」  ハーティが珍しく激昂する。セルシオが最後に見たのは王族を殴り捨てた時くらいだ。 「兄さん。変わらないね?」  セルシオは苛立ちをハーティにぶつけるように攻め寄った。  ハーティが殴り掛かる。セルシオはその手を掴む。あとは乱闘だ。無我夢中で上になり下になり、昔のように力任せに殴り合う。 「止めてっ」  テトラが入ってきてセルシオにしがみついた。テトラを振り払ってセルシオはハーティから離れる。テトラは床に尻餅を着いた。 「死に損ないが僕を止めるの? 笑えるね」  セルシオがテトラに毒を吐いた。 「いい加減にしろ! セルシオ。君がやっているのは犯罪なんだ!」 「何をいうんだ? 僕はリシアを愛しているだけだ。犯罪? リシアには僕が必要だってことを解らせてるだけだ。リシアが理解しないのが悪い。それだけのことで、兄さんには関係ない」
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