三章

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「セルシオ……君は間違っている」 「間違う? 価値観が違うだけの話だ。理解はできる。解らないことがいけない。理解の努力をリシアはやってくれているよ?」  セルシオは気を失うリシアに近寄った。無理矢理に起こそうと髪を掴む。ハーティがすかさず近寄ってセルシオの手を握る。 「それを止めろと言っているんだ」 「リシアは僕の物だ。何しようと勝手だよ」  顔面に拳が当たる。衝撃でリシアの手を離す。 「何? 勝手に不祥事を起こして飛び出した挙げ句に舞い戻ってきて僕のすることに指図するのか?」 「飛び出したことも不祥事を起こしたことも謝るつもりが、セルの行動を見ているとまったく無くなるんだよ」 「やっぱり、兄さんは兄さんだ。昔とまるで変わらない! 自分のことしか考えて居ないところは特に!」 「ああ。同じ顔を見ているのも苦痛だよ。しかも、犯罪者に成り下がった奴に詫びるつもりはない!」  ハーティの一言もセルシオには届かない。 「僕は正しいことをしたんだ。リシアも前の女も笑わない。僕の前じゃ笑わなくなる。そんなに僕に愛されたくないのか?」 「男でも嫌だね」  ハーティが短く吐き捨てる。 「起きろ。リシア!」  セルシオはリシアを揺さぶる。
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