三章

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「隣の、大陸?」  リシアは目を見開く。本で読んだことがある。ブルーライト大陸を船で越えた先には貿易都市がある。貿易都市は自然も豊かで争いもなく、とても静かな場所だと書いてあった。リシアは船に乗ることも初めてであったし、外部に触れることも少なかった。僅かに胸が踊る。知らない場所に行けることを素直に喜んだ。 「本当に?」  ハーティが頷いて封筒を背広から取り出した。白い封筒を受け取り、開いたリシアの前に船のチケットがある。触れたことのない紙質だ。肌触りがとても良い。固い紙ではない。柔らかな印象を受けた。 「隣の大陸ではね。移民を受け入れる環境が整っているんだ。調べたし、実際に話も聞いている。この大陸に止まるよりは新天地を目指しても悪くはないと思うんだ」  ハーティがしっかりとした口調で説明する。リシアはその言葉を信じたくなった。リシアはこの世界に居てもなにもすることがない。違う世界に足を入れてもっと知識を得たいと徐々に自分が抑えていたものが動き出す。忘れていた好奇心と前向きな気持ちがリシアの心底で脈打った。 「悪い話ではないでしょう?」  テトラが真剣に言葉を紡ぐ。リシアが知らない内に話が出来ていたようだ。
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