三章

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「ここから逃げたい」  リシアは迷わなかった。躊躇う必要もなかった。僅かだが信じたいという気持ちを持った。 「それなら話は決まりだ。明日の朝、発とう」 「仕事は?」  テトラが訊ねる。 「船のチケットを買った時に辞めてきた。退職金が出てる。あとは頑張る」  ハーティは言った。  セルシオとハーティは違う。リシアはゆっくりと理解し始める。だが、並ばれては見分ける自信がない。 「では、私は荷物を纏めてきますね!」  ネアがリビングを出ていく。ネアが失うものはなにもないようだ。言葉は嬉々としていて張りがある。この場に居る誰よりも張り切っていた。 「私は荷物はないから」  リシアはネアが用意した紅茶を飲んだ。紅茶に拘りはない。味はいつも通りしない。それでも匂いは確実に感じた。ひとりで飲む紅茶より美味しい。そんな気がした。 「テトラ。僕も仕度をしてくる。リシアを見ててくれ」  ハーティがリビングから出ていった。リシアはカップを置いていてチケット入りの封筒を眺める。 「船に乗ったことがないから楽しみね」  テトラが傍らに座る。 「あ、はい私も乗ったことがないです。池のボートみたいなものですよね」 「絵にするとこんな感じかな?」
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