三章

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 テトラとネアも屋敷が燃え盛るのを忘れてセルシオに近寄った。  セルシオが起き上がろうとして居る。ハーティがテトラとネアをセルシオから離した。  セルシオがブルーの瞳で周りを睨む。リシアは息を呑んで階段の入口に居る。膝が情けないほど震えていた。怖いのだ。セルシオの怒鳴る声や態度が。逃げられないのではないかとリシアは身構えていた。 「お前らが何処へ出ようと勝手だが、リシアは置いていけ!」  セルシオが怒気をばらまいた。 「断るよ。寧ろ、君に出ていって貰いたいくらいだ」  ハーティが柔らかく言う。 「ふざけるな。お前らが出ていけ! 放火をしたと役人に言ってやる!」 「セルシオ。君は何人殺したんだ。罪を重ねる必要がこれ以上あるのか?」 「はっ? 笑わせるな。僕を馬鹿にするからいけないんだ!」  身体を床に打ち付けたにも関わらずセルシオはわめき散らす。  部屋の炎は二階を包んで熱気が充満する。リシアにも解る。このままでは全員が焼け死んでしまう。セルシオの頭上のシャンデリアを飾る紐に炎が乗り移っては不味い。リシアは声を響かせた。 「危ないよ。外に出ましょう!」  ハーティ達がリシアを見る。リシアは階段を離れてネアとテトラを外に促す。  煙は階段から滑り落ち、炎は部屋から溢れ出す勢いだ。
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