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ほとんど逃げるようにライトモール大陸のレンス港から船に乗る。
船は五十人乗りだ。隣大陸、エイテル大陸まで二日の渡航になる。
リシアは甲板から大海原を眺めていた。
雨は止んだ。朝には虹が空を彩って、とても美しい光景を見ることができた。
海は広い。空は青い。船は風を受けて進む。白い泡は波に道筋を作り、船は何処までも先を目指す。
リシアは遠ざかる大陸に興味はない。スラム街の人々の笑顔が引き留めたが、そんなものはリシアには関係ない。誰かに捕まった人生などリシアはもう選ばない。自由に気ままに広がる世界が、リシアに解放感で包んでいく。
強い風がリシアの髪の毛を浮かせる。
通りすぎていく鳥は、知らない鳥だった。
リシアは、背伸びする。手摺から手を離して胸いっぱいに息を吸う。
海は太陽光できらきらと光る。
リシアの船出は最高であった。
「リシア、海に落ちるといけない。こっちにおいで?」
ハーティが客室から手招いた。
「今行く! でも、もう少し、海を見ていたいの!」
リシアは振り返り言葉を紡ぐ。
「そうかい。部屋の鍵は開けておくよ。何時でも帰っておいで」
ハーティの優しい声にリシアは頷いた。
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