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69.運転席
【弘】 とうとう買っちまったな。
【正明】ああ、明日から練習が楽しみだ。今日はありがとな。
【弘】 いいっていいって、今度おごってくれれば。
でも先輩、連絡した時あんまり反応良くなかったんだよね。
説明するの大変だったんだぞ。黙って買っちゃえば良かったのに。
【正明】だって自分が売ったマシンが知らない内にバトルに出てたら、
気になるだろ?
【弘】 そんなもんかねぇ。よくわかんねーな。
【正明】まぁ、いろいろあってさ。この前、元メック乗りに会って・・・
道路の端っこをゆっくり走る軽トラック。
荷台を見上げながら、原付のお姉さんが追い越していく。
70.ガレージ(夕方)
両手両膝をついた状態のノーティフロッグ。
ガレージの隅に置かれた机と椅子。
まだガレージの中はスカスカ。シャッターは開いている。
コオロギの鳴き声が聞こえる。
ノーティフロッグに繋がったコードを抜く作業服のままの正明。
キャップを後ろかぶりにし、ヘッドアップディスプレイを装着する。
シートに座ってコードを刺し、ボタンを押す。
電源が入って小さなモニターに”BEREIT”の文字が浮かんだ。
開ける緑色の世界。
キューンというモーター音と共にシャッターの外に向かって進む。
立ち上がると共に外に出るノーティフロッグ。
【正明】へぇ、ヘッドトラッキングするんだ
頭を左右に振るとともに動く視界。
ノーティフロッグの両サイドについたカメラも連動して動く。
【正明】さて、いってみますか!
右手のアクセルレバーを握りこむ。
急加速するボディ。
だが上半身が起きており、序々に反り返っていく。
足が先に出て行き、そして。
【正明】わっ、とっ、おっ
ひっくり返る。騒音。バフンと言う音と共にエアバックが開く。
【正明】うひゃあ、なんだこりゃっ
エアバックのエアが抜ける。シュルシュルと格納される。
ほうほうの態で外に出る正明。
【正明】あちゃあ、もう割れちゃったよ・・・
ヘッドテールのカウルが割れている。
【正明】まさか”お散歩”やらかすとはなぁ。
泣きそうになってノーティフロッグを見る正明。
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