第1章

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時間を杜撰に扱う───それはつまり、金をどぶに捨て、自らの命を着々と削っている事と同じなのでは、と、吾輩は思うのである。 そこまで考え───吾輩はふっと自嘲した。 何故これ程に思い巡らせたりしているのだ。 吾輩が考えた所で人間は変わらぬのに。 考えるだけ無駄な事は考えまいと、もう随分前に決めたはずなのに… 嗚呼、後わずかで吾輩の今日の命が終わる。 止まることなく一日中回り続けたこの二つの足が真上に揃う時、吾輩の意識は一瞬途切れ─── 次の瞬間には、置き時計としての使命を果たす一日に安堵するかもしれぬし、あるいは無機質なデジタルに姿を変えているかもしれぬ。 そしてそれは、吾輩の意志が決められるものでは無い事を、吾輩はもう随分前に悟った。 吾輩はただ与えられた使命を果たす為に存在し、定められた宿命を背負い続け、淡々と人間の日々を見送る───そしてそれを変える事のできる力が吾輩には無いという事も。
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