御護りの作法

2.謎の男

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　放課後になり、さらには下校時刻を過ぎても謎の男を見つけることはできなかった。授業中でも構わず校舎内を捜索してみたものの、謎の男は見つからない。昼間のうちに新校舎は探し終わり、午後からは旧校舎を歩き周っているがいっこうに謎の男が見つかる気配はなかった。

　新校舎と違い旧校舎には人の気配がほとんどない。５階建ての校舎は広く廊下の端に立つと反対側の廊下の壁が見えない。授業中ともなれば各特別教室に生徒の出入りがあるが、それ以外はがらんとしていた。

　廊下を背に並ぶロッカーは傷だらけで使う生徒はいない。中には埃が溜まったり誰かの忘れ物が放置されたままになっている。

　下校時刻が過ぎた校舎内は薄暗く、申し訳程度に取り付けられた照明だけが頼りだ。元々専門教科以外には使われない校舎は夜の使用を考えられていない。

　人探しに夢中になって暗がりで放置されたままの物にぶつかることが何度もあった。その度に足を止める事を繰り返していればあっという間に時計の針は進んでいた。

もう全て探し終わったのに謎の男は見つからなかった。杏は疲れから廊下の真ん中に座りこむ。１階から順に５階まで見てきた。もう探す場所はない。