1.噂

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※  朝になって教室で万里を待っているのはワクワクした。万里は上手くいっただろうか。教室の端で参考書を開きながら入口をチラチラ見ていると、目的の人物の姿が目に入って杏は勢いよく立ち上がった。賑やかな教室では立ったぐらいでは目立ちもせず、他のクラスメイトと挨拶をしている万里の元へ駆け寄る。 「おはよう、万里」 「おはよー」  周りにいたクラスメイトは冷めた視線を向けてくるが、今日はそれも気にならない。昨日の万里の告白の結果が知りたくて、席に着いた万里に小声で尋ねる。  その頃には周囲にはほとんど人はいなくなっていて秘密の話をするにはちょうどよかった。 「ねぇ、昨日の結果はどうだったの?」 「結果?なんのこと」  こてんと首を傾げた万里に、杏は告白が上手くいったから茶化しているのだろうと思った。  千曲のことは万里の美術部の3年生の部長で、毎日万里を部活に迎えに来てくれることしか知らない。けれど、万里が出会ってすぐに千曲に惹かれて2人の時間を作りたいが為にわざと遅刻してまで迎えに来てもらっていることを知っている。  わざわざそこまでしてくれるのなら脈ありだと思う。それに万里は可愛いし、性格もいいし、コミュ力だって高い。いつも2人並んで歩く姿はお似合いで、付き合ったらピッタリだとも思った。
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