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昼休みにはスマホに小谷と万里から連絡があった。小谷からは、万里は起きたけどやっぱり御護りと千曲の事は忘れていたことが。
万里からは早く戻ってきてね、というものだった。万里が目覚めて安堵する一方、御護りと千曲の事を覚えていない事に気持ちが落ち込んでいく。
それ以外はなにも変わらずとも、やはり万里が好きな人を忘れてしまったことが悲しかった。2人にそれぞれ返信してからは午前中よりも気合を入れて旧校舎内を捜索するも、昼休みもご飯を食べずに探し回っていた為、お腹はペコペコだ。
お腹を押えながら窓の外を見上げる。空は橙色から深い青に移り変わり、夜の訪れを告げていた。そろそろ帰らないと、見回りの先生につまみ出されてしまう。
いくら大きな校舎とはいえ、見回りの先生から逃げきるのは至難の業だ。杏は学年1位の成績をキープしているが、見つかってしまえば先生からの叱責は免れないだろう。
人の気配がないか注意深く階段を降りようと辺りを見回す。現在は5階。5階には特別教室はなく空き教室が軒を連ねている。廊下にはロッカーすら置いてなく、なにもないはず。
が、視界の遥か先で影が横ぎった。
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