4.御護りの作法

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 そう言った虎丸は、杏から視線を外すと再び道具箱を漁り始める。何本か綺麗な色の紐を取り出して文机に並べると、布袋をその真ん中に置いた。何本もの糸を布袋に当てては変えてを繰り返している。杏は虎丸に言われた言葉を反復していた。  願い事は自分で行動しなければ叶わない。万里を元に戻したいのならば千曲の記憶のきっかけを探さなければならないということ。千曲本人が声をかけても思い出さなかったのだ。虎丸は簡単だと言ったが、たった1日できっかけを見つけるのは至難の業だ。じゃあどうしたら?  いっそのこと万里に――。  と、1人考えにふけていると虎丸が紐を選ぶ手を動かしたまま訊いてきた。 「なぁ、なんで団子ちゃんは赤の他人にそこまでするんだ?」 「万里の事ですか?……私にとって万里は赤の他人じゃありません。大切な親友なんです」 「ふーん、そう。でも親友だからと言って願い事を叶えるチャンスが目の前にあるのに、なんで自分の為に願わないんだ?俺が今まで聞いてきた願い事は全部、その人が自分の為に願うモノだった。現にその親友だって自分の「告白を成功させたい」っていう自分の為の願い事だった。団子ちゃんみたいに他人の為に願おうなんて奴はいなかったよ」 「……そんな、虎丸先輩が気にするような大した理由があるわけじゃないんです」
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