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犬。
狼みたいな耳とぎらついた歯で、
人とは違う無骨で大きな下半身。
あと灰色の尻尾。
生物学上は狼人間の彼女の仕事は犬であった。
「なあ、ガザリ。
俺は今お前に何をされている。」
犬と言っても比喩であり、
彼女、ガザリの仕事はなんのへんてつもない。
ただの闇討ちで両目の光を失った陸軍将校の身の回りの世話をする仕事である。
「なにもおかしいことはしてませんよ。
腕の毛抜かれてるダケデス。」
「痛いんだけどなあ?」
「ならガムテープで一気に抜きましょうか?」
「がひゃひゃひょひゃ!!
お前ぶち殺されてえみたいだなあ!!」
「嫌です、将校殿。」
無駄に広いスペースを無駄に多い金製の勲章や盾で埋め尽くされた将校の事務室。
ガザリはそこで引退してもなお衰えない、
強靭な肉体を持つ中年のオヤジの人間を、
死んだ目で介護していた。
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