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我々が歩く山道の近くには大きな傘のキノコが生えている。しかし我々はキノコを食わない。
私の友人は空腹に耐えかねてキノコを貪ったことがあった。一時の空腹は改善されたようであったが、翌日の早朝には泡を吹いて死んでいた。以来、我々はキノコを食うという愚行は犯さぬよう決めていた。
今日狙うは肉である。
ここしばらく肉という肉にありついていない。先日、うさぎを恋人と共に食ったが、それ以来山菜などしか口にしていなかった。
山菜では物足りないのだ。肉とは麻薬のようなもので、しばらく食っていないと、無性に叫びたくなる。幼子のように暴れたくもなる。困ったことに、これが我々なのだ。
私は今、猛烈に肉を求めている。恋人もまた同様で、あたりを見る目はいつになく鋭い。
今日も肉にありつけぬのなら、仕方がない、山を下りるしかなかろう。山を下りれば危険が伴うということは、たびたび耳にする。ゆえに私は未だ山にとどまったままであったが、餓死するよりはよいかもしれない。
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