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馬鹿馬鹿しい商品に馬鹿馬鹿しい注意書。
ふざけ方が徹底している。
俺は【注意書】を守り香苗にメールした。
香苗は打ち合わせがあるから遅くなるかも……と返信してきた。
俺も残業だから問題ないと返した。
明日は土曜だし、なんなら泊まりだってOKだ。
そして日付が変わる少し前、香苗はやってきた。
珈琲を淹れている間にあのグラスを差し出す。
香苗は丁寧にリボンをはずし、包装紙を破かないよう慎重にテープをはがしていく。
俺は黙ってそれを見守った。
包装紙を取り除くと綺麗な木目の木の箱が現れた。
蓋と本体の境目には四カ所、小さい御札のような紙が貼られていた。
〝封印〟と書いてある。
そして、木箱のふたにも〝注意書〟が。
【注意】
必ずこの箱はグラスを使う『あなた』が一人きりの時にお開け下さい。
決して『あなた』以外の方がいる場所では開封しない事。
※このグラスがあなた以外の方の目にふれてしまうと効果は消えてなくなります。
香苗は【注意書】を忠実に守り、珈琲を飲んですぐに帰ってしまった。
そして、
これが香苗を見た最後の日となった。
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