三年後

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いつもの習慣で見もしないテレビをつけっぱなしにしたままスマホをいじっていると、懐かしい声が聞こえてきた。 「えっ!?」 顔を上げてテレビの画面に目をやる。 画面の中で微笑んでいたのは香苗だった。 たまたま付いていたのは、今、話題の人物を取り上げる番組。 画面に映る香苗は、最後に見た三年前のあの日のあいつよりも数倍、華やいで見える。 綺麗になった。 テレビのボリュームを上げる。 「カナエさんはヨーロッパを中心に活躍中ですが、今回、映画の主演が決まったという事で日本に一時帰国中ですーー」 女性アナウンサーが香苗の紹介をしている。 「カナエさんはなぜ、ご自分がビッグチャンスをつかむ事が出来たと思いますか?」 香苗は答えた。 「信じる事です。信じて努力を怠らない事。」 アナウンサーは最後に、と言って質問した。 「カナエさんにとって一番の宝物って何ですか?」 眩しすぎる笑顔で香苗は答えた。 「はい。お気に入りのグラスが宝物です。」
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