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俺はその言葉に腹が立った。
「おい!お前らのせいだろうが!」
「そう言われましても……、逃げられなかったものは逃げられなかったものですから。致し方ありません」
「お前なぁ……!」
殴ろうとしたが、宝条絢香に止められる。
なんで?と聞くと、
「その人を殴っても、お兄ちゃんは帰ってこない……!」
それを聞いて、俺は握った拳を解き、うつむく。
「いやー、びっくりしました。気をつけてくださいね」
こいつの能天気ぶりには、腹が立つが、我慢した。
「それでは解散しましょうか。それではまた後日、メール差し上げます」
そうして、ジョークは帰っていった。
俺と宝条絢香を除く他のメンバーも、それぞれ帰っていった。
苛立ちや不安、いろんな感情を顔にしながら。
俺は、宝条絢香に聞く。
「どう?帰れる?」
すると、宝条絢香は頷き「大丈夫」と言った。
おそらく、いや絶対、大丈夫ではないだろうが、何をすればいいか分からず、俺は頷いた。
そして、ふと思いつき、
「これ、俺のメールアドレスと電話番号。なんかあったら連絡して」
「あ、ありがとう……」
それくらいしかできなかった。
正直、連絡がないのが一番いいんだけど……。
そして俺は別れの言葉を告げて家に向かった。
帰った後も特に何があったのかは聞かれず、そのまま風呂に入って寝た。
「あんなのが、あと四回も……」
俺は、何も考えないようにした。
できれば、これが夢だと。
明日起きたら、何事もなかったと、そう思いたい……。
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