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店に入ると(裏口だが)、色んな人がせわしなく走っていた。
「結構バタバタしてるな」
これじゃすぐに見つかるんじゃ、と思ったが、特に声をかけられなかった。
いや、それはまずいと思うのだが、チラッと見てくるだけで、なにも尋ねてこない。
「どうなってんだ……?」
「いいじゃん!ありがたいくらいだし!」
そう言って陸はどんどん進んでいく。
その後を付いて行くと、関係者のみの場所から、普通、俺たちが歩くような売り場に来ていた。
「血痕があんのはどこだ?」
と、探そうとした時やっと、いや、めんどくさいことに話しかけてきた人がいた。
「君たち、どこから入ってきたんだね?」
それはまさに警備員って感じの人だった。
制服を着てなくても、何か聞かれたら答えてしまいそうな。
「えーと……」
俺が返事に困ってると、待ってましたとばかりに陸が、
「いや~、すいません。裏口が開いていたので、つい好奇心で……すいません!」
そう言うと、警備員の人は溜息の後、「君たち、見た感じ高校生だろう。なにが良くてなにが駄目なのかの区別はついているだろう?今後、こういう場で好奇心にしたがって動くものじゃ無いよ」とそんな感じのことを言うと、陸は、はいはいと適当に答え、警備員付き添いのもと、入ってきた裏口へと引き返した。
ちぇ、っと陸が舌打ちしたのを聞きながら、俺たちはデパートを後ろに家に向かっていた。
「全く、結構厳しいよな」
「でもあの感じ、確かに何かありそうね……」
「だろ?!絶対血痕は残ってるんだ!」
珍しく乗り気だな、と真弓に話しかける。
「別に……。でも、いくらなんでもおかしかったからね」
「おかしい?」
「店の人が入り口にいたのに、裏口にいなかったことよ」
「いなくても別におかしく無いんじゃ?」
「確かに、通常は閉まってるからね。でも、閉めてるといっても、チェック用に置いててもおかしくないわ。さらにあの状況ならね」
そこまで言われ、そういえばすれ違う人が、見るだけで声をかけてこなかったことを思い出す。
でも、それでも違和感を感じて、改めて聞く。
「まぁ、チェック用ってのはおかしいかも知れないけど、普通なら入らないでねって言われるものでしょ?」
「まぁ、そうだな。あ、声を掛けてこなかったことか」
「そう、話しかけなかったのは、そんなことをしている場合じゃなかったから」
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