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この質問も何度目だろうか…。そろそろ喝を入れた方がいいな
「理事長」
「何かな、麻野くん?」
「これ以上俺の昼休みを奪うならあの部屋のこと、河崎さんが居る前で伝えるけどいいか?」
「っ!!!」
25歳のすごい美形な理事長はさっきまでのデレデレ感が全くなく、しかも理事長の好きな超低音ボイスを耳元で囁く。だが顔が青くなり顔がグチャグチャになるくらい泣いてしまった。案の定河崎さんは聞こえてないのか疑問顔になっている。
「お願いっ!やめてっ!」
顔青ざめた理事長が俺の裾を掴んで泣きながら縋ってくる。眉間を一回動かして河崎さんが質問してきた。
「どうかしましたか理事長?」
「な、なんでもないよ河崎!大丈夫だから心配するな!」
理事長の言葉でさらなる疑問が河崎さんから出てきたので、仕方なく俺は助け舟を出すことにした。
「河崎さん」
「はい、なんでしょう?」
「大丈夫です」
「?」
俺は口元だけを緩ませてニッと笑った。それを見て河崎さんは先程の廊下での話を思い出して何を思ったのか「なるほど、わかりまた」と言ってそのまま部屋を出て行った。そしてここから離れていく。
安心した理事長が俺に今度は甘えるように裾を持ち目を潤わせながら上目遣いで話しかけてきた。
25歳の美形男性とは思えない顔だけどな…
「麻野くん…」
「何ですか?」
「お願いだからあの事は…」
「言いませんよ、まだ」
「まだって…じゃあいつかは言うつもり!?」
「……………………」
「なんで目線を外すんだ!?」
「……………………」
「無言にならないで!!」
「……………………はい」
「今の間は何!?」
という漫才を繰り広げたところで、理事長が甘えという名の顔を赤くにしながら上目遣いで話し出した。
「麻野くん…」
「はい」
「麻野くんだけが頼りなんだ…。お願いだから河崎が居る前で煽るような言い回しだけはやめてくれ…。あそこが見つかったらもう…っ…」
あそこ…、というのはあのイベントの際に出会った部屋のこと。あの部屋はお菓子だらけで、まさに理事長の宝庫とも言える場所。そこを司書兼側近(同じ意味)である河崎さんに見つかれば、即廃棄処分になりかねない。それだけは避けたいと理事長は言った。そして今、捨て身の覚悟でこんな羞恥を晒している。
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