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オリトは順調にガリオンを追い詰めていく。わざと敵を怒らせるように攻撃を当てながら。オルトロスは怪訝に思っていた。
「オリト、なぜ一息に止めを刺さないの? 油断しないでと言ったはずよ」
「油断はしてないぜ。すぐに倒しちまったら可愛い新入りさんが戦場を体験する間もなく終わっちまうからな。安心しな。もう二度とこいつを空には逃がさねえ!」
「まったく・・・」
オルトロスは敵にパンチを当てる。ガリオンはもうかなり弱ってきていた。だが、その瞳は人間に対する怒りに燃えていた。
その怒りがこの場にいる別の人間を捉えた。
「じゃあ、そろそろ止めを刺すか。見ていろ、お嬢さん。ガリオンはこうやって倒すんだ」
だが、その攻撃は空振りした。ガリオンが突然別の方向へ走ったのだ。空に逃げるでも、オリトやアスナに向かっていくでもなかった。全く予期しない方向だった。
「なんだあ!?」
「オリト! あそこに人が!」
「なんだって!?」
オルトロスがその映像を捉える。だが、遅すぎた。ガリオンの足に追いつくのはもう無理だった。
アスナもガリオンの動きに気づいていた。他人をあてにする甘い考えはすぐに捨てた。
「ルクス、力を貸して!」
「了解、アスナ」
「うおおお!」
足元のペダルを思いっきり踏み、猛ダッシュする。ガリオンの前に回り込み、素早く操縦桿を操作し、倒れかけ不格好ながらも何とか体当たりでその前進を止めた。
すぐ背後では子供が泣いている。アスナが出来たのは敵の前進を止めただけだった。続く攻撃を止める手段は何もない。
「ちゃんと真面目に訓練をしておけば良かったな。ごめんね、ルクス。こんなわたしの我儘に巻き込んで」
「アスナ、わたしにあなたを助けることは可能ですか?」
「うん、可能よ」
アスナはもうあきらめていた。だが、ガリオンが殺意の攻撃を放とうとした瞬間、その化け物の姿は横へと吹っ飛んだ。
「アスナああああ!!」
オリトの乗るオルトロスがガリオンを吹っ飛ばしたのだ。ガリオンはすぐに立ち上がる。
オリトはもう攻撃の手を緩めることはしなかった。
「この糞野郎がああああ!!」
それは誰に対して言った言葉だったろうか。オリトの怒りのキックはガリオンをいとも容易く滅ぼした。
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