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放課後。アスナは憂鬱な顔で街中を歩いていた。
周囲を通り過ぎる人々の顔は明るく日常を楽しんでいる。
しかし、アスナの心はそう晴れてはいない。
「わたしの心はここと同じだ。この街と」
そこは賑やかな街を抜けて辿りついた場所。今では廃墟となった街グラゼ。かつて自分が住んでいた場所だった。
人気のない廃墟となった街を歩き、家に辿りつく。
「ただいま、母さん」
今では瓦礫となった玄関を抜けて部屋のあった場所に辿りつき、座る。
「やっぱりここは落ち着くね。あいつ酷いんだよ。外で新しい女を作って一人で楽しくやってるんだ。わたしのことなんて放っておいてさ。ま、わたしにとってもあんな奴どうでもいいんだけどさ。すぐに学校なんて出てって独り立ちしてやる」
父親のことを吐き捨て、空を見上げる。白い膜とは違う割れた場所の向こうに遠く青い空が見えていた。
「空の割れた日か。空が割れて化け物が来て人々を襲って街が滅んだ。あの恐怖を本当に知っている人がどれだけいるんだろう」
そう思っていると青い空に黒い点のような物が見えた。
「あれ何だろう」
その姿はすぐに分かった。その化け物ガリオンが人一人を見つけるのは容易いことだった。アスナはすぐに自分が狙われていることを悟った。
「どうしてガリオンが? だってガリオンが来る時は警報が鳴るはずなのに・・・」
今更のように鳴り響く警報。アスナはその場所から街に向かって逃げ出した。
「わたしの馬鹿! 他人なんて信じるものじゃないって知っていたはずなのに!」
ガリオンが轟音を上げて着地するとともに吹き荒れる風がアスナを吹っ飛ばした。
恐る恐る振り返ると僅かながらも原型を留めていた我が家がガリオンの足の下で完全な瓦礫と化していた。
それに文句を言うことも出来なかった。
ガリオンは笑っていた。人を襲うことを楽しんでいた。
「うわああああ!」
アスナは一目散に逃げ出した。
近くの倉庫に脇目もふらずに飛び込み、その中にあった狭い場所に潜り込んで頭を抱えて縮こまった。
外からは倉庫を破ろうと叩くガリオンの立てる音がする。
「どうしてわたしばっかりこんな目に。街の奴らの方に行ってよ。父さんの方に行ってよ。誰もわたしに構わないでよ。そっとしておいてよ」
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