富豪と貧民

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「以前の大会とずいぶん違いますか」 男は辺りを見渡し 僕の問いに容易に応えてくれた 「ずいぶんと人が多いな そして賞金が以前と比べ はね上がっている」 「賞金…」 男の目線を追いかける 「この遊戯のオマケは あのジャックポットが魅力なの レートはまだ公開されていないけど 入場者の数で決まるのよ てか、ルールを把握しなさいな」 「はは、ルールとマナーは 守らないとチャンスを失ってしまうよ」 男はチクリと釘をさす ルールといっても 勝負座席での札公開は 審判員の立ち会いが必要です 札の強奪行為には退場及び罰金 敗退者は速やかに退場 場内で知り得た情報は口外不問 最低限のことしか 書いていない… 「ルールとは秩序を乱さねば 増えることはない マナーを忘れるな」 男は僕の肩をポンと叩く やがて勝負開始の合図が鳴り響く 札を増やさなくていいのかと 衝動に駆られたが 目の前の二人が動かなかった 札配布所の人の 群がりに目を奪われたまま 時を待つ 「もとをただせば 入場ゲートをくぐっただけで 参加できる単純ゲーム だけど、何故に こんなに人を集めれる…」 ボソッと声が漏れた 二人は僕をちらっとみた 「あんたの言う通り可笑しな話よね この先の勝負がみたいから 私はここにいるの」 「とんだ強がりだな 確かにたった三枚の札が どう化けるのか興味深い」 …手元にある黒白の札を数えた 黒と白の札が各々五枚… 対戦者が引くのだから 自分で選ぶ訳じゃない ふーっと息を吐く 「まだ遊戯は始まらない」 「動き出すのはギリギリに 持札の少なさが 自分の気持ちを高めるの」 女は目の前に10枚の札を 見せつけた それに続いて男も 持札を見せつける 「えっ、その数は…」 「ははっ、けっこう小心者なんでね」 用意のない自分を嘆いた 「じゃ、赤札を取りにいきましょ」 二人は意気揚々と勝負座に向かう その後に黙ってついていく…
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