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二人は勝負席に
並んで対戦相手を待つ
次々と目の前で
札を引き合い続けた
女は審判に手を上げて
席を離れて戻ってくるなり札を広げた
赤札が増えている
僕の手元にない札がすごく目についた
「早くしないと乗り遅れちゃうよ」
勢いよく僕は勝負座席に並んだ
審判がルールを掲示する
白>黒…白札を引いた方に札移動
白=白or黒=黒…両者赤札に交換
相手と同じ札を引けばいい
握り絞めた札を広げ
腕を差し出した
一枚引く度に互いの勝負レーンは
移動する同じ相手とは続けて
勝負はしない…
続け様に白札を引いたことにより
それぐらいに思えるぐらいの
余裕が見えた
引分を狙い合うたびに
赤札が互いに増えていく
黒札に価値はあるのだろうか…
手持ちの札が
増えた安堵が欲を消す
同じことの繰り返しに飽きていた
審判に手を上げ席から外れた
手持ちの札を広げ考える
増えすぎた札にどうやって
優越をつけるのだろうか…
掲示板の前で
次回遊戯を模索する
黒>赤>白>黒の三竦み
明らかにジャンケンポン…
無数の札を引き合えば
場内に出回る札は
確実に増えていくのだな
男は悔しそうに歩いている
以前の勝負の名残があるのだろうか
札の用意に忙しい
「ずいぶんと札が偏った…
これ以上の勝負は危険だ」
男は独り言を呟いた
だが充分過ぎる札の厚さに羨んだ
「あら、ずいぶんと札が
増えているわね」
女がどこからか割り込んだ
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