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「いってきまーす」
玄関を開けると春の光が目に入る。
うらうらとした暖かい陽を浴びながら、駅へ向かって歩き出そうした時
「待って~」
背後からお母さんの声がした。
聞こえたのは声だけ。振り返るも姿は見えない。
パタパタとスリッパの音が近づいてきたから
「何~?」
玄関へ戻って、リビングに向かって声をかけると、片手に何かを持った母親が出てきた。
「忘れ物。はいっ」
「あ。ほんとだ」
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