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「真瀬~!」
名前を呼ばれた
と思って、振り向いた。
「はい」
「何~?」
あたしが返事をしたのと低い声が聞こえたのは、同時だった。
「え?」
驚いて声がした方を見る。
「ん?」
彼もそう思ったのだろう。
こちらを向いた男の子と目が合った。
隣の席に座る男の子は、席の前に立つあたしを見上げて、首を傾げて言った。
「……マセっつーの?」
「ううん。ナセ」
「おー。一文字違い」
そう言って、彼はキュッと口角を上げて笑った。
目尻は少し垂れている。
ふと、こうゆう笑顔を屈託のない笑顔って言うだろうなぁと思った。
「ナセ……何?」
言って、彼が立ち上がる。
見下げていたのに、見上げる形になった。
思っていたよりも背が高い。
「名瀬」
名前を言おうとした時だった。
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