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老人は叫び続けた。
「ぶら下がっておるじゃと!自分の足で立っていないなどと、よくもまあしゃあしゃあと言えたもんじゃ!恥というもんはないのか、まったく!」
「別に恥じることではありません。生まれ持った性質ですので。」
「また仕方ないか!それでもやってやるという気概はないのか!」
強烈だ。青年は感動にも似た感情を覚えた。昔気質とは思っていたものの、ここまでの無茶を言ってくれるとは。
この仕事を始めたばかりのころの青年なら反抗していただろうが、今では老人の発言に、自分にはないものがあると感じられる程に成長した。
しかし相変わらずわからないこともある。
「ぶら下がることは、そんなにも悪いことでしょうか?」
「当たり前じゃ!」
老人は即答した。
「ぶら下げている仲間に申し訳ないとは思わんのか!大体お前は仲間への態度もなっとらん!」
これには異論がある。
「そんなことはありません。ぶら下げてくれる彼には感謝していますし、そもそも彼の仕事はこれなんです。そして、僕の後ろにいる彼とも、毎日協力し合っています。」
彼らのやたらと規則的な寝息を聞きながら、青年は言った。そういえば彼らはこの討論中に起きていたことは一度もないなと思いながら。
「協力じゃと!お前が働いとるのは夜だけじゃないか!上で支えとるやつはそれこそ一日中そうしとるし、後ろの白い奴は日中ほとんど働いておる!お前もたまに日中に働くが、それでも仕事をほとんどは相棒任せじゃろうが!」
老人は鼻を鳴らした。しかし青年にも言い分があった。
「僕たちはそれぞれ役割が違うんです。働く時間帯も、異なるのは当然では?それでも必要なときにはきちんと一緒に働いています。」
「一緒に働くというのはな、わしらみたいに、常に肩を並べて仕事に臨むことを言うんじゃ。こうして二人三脚でやっていくことが協力というんじゃ!」
そういう老人の横からはひときわ大きないびきが聞こえた。改めて俺は寝ているぞと言われたような、そんなタイミングだった。そういえば、彼に一度話が振られたこともあった。以来彼が会話の中起きているのを見たことがない。
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