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約束の水曜日。
西門、午後12時30分。
早く着きすぎちゃった……。
特別楽しみにしていたわけではないけれど、
なぜか他で時間をつぶす気にはなれず、
もしかしたらもう居たりするかな?と少し期待して来てみたけど。
30分も前に居るわけないよね。
ちょうど門の近くまで伸びている木陰に逃げ込み、
時間まで彼を待つことにした。
梅雨入りして1週間は経ったはず。
しかし今日は、雲の切れ間から光が差している。
梅雨の時期には珍しい晴れ間だ。
木陰にいても、少しすれば額に汗がにじむ。
確か予報では、夕方から雷に注意とか言ってたっけ。
それまでに帰れるのかな~。
そもそも、彼には聞きたいことが沢山ある。
というか、彼について知らないことだらけだ。
まず何を聞こうか、頭の中で整理を始める。
それからは、時間が経つのがあっという間だった。
「すいません、お待たせしました。」
「いえ。全然、大丈夫です。」
少し手前から私に向かって投げられた声は、
疲労の色が混じっていた。
駅から走ってきたのかな。
肩を上下に動かす彼が、私の目の前に立つ。
「1限受けてから1回家に帰って、
掃除してからここに来ようと思って。
そしたら、意外と掃除が終わらなくて。
電車一本乗り過ごしちゃったから遅れました、すいません。」
ふいに携帯の時刻を見ると、約束の時間を5分ほど過ぎていた。
「そうだったんですか。
そんなに急がなくても、連絡さえくれれば良かったのに。」
「それが、連絡先交換してなかったことに、
電車の中で気付いて。」
あ、本当だ。
それも聞かなきゃいけない。
質問リストに1つ追加だ。
「それじゃあ、行きましょうか。」
上下に動いていた肩が、大分落ち着いていた。
先に歩き始めた彼の後を追って、木陰から足を踏み出した。
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