第1章

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「えっと、とりあえず中に……って、あれ?あの!」 呆然と立ち尽くしている間に、 彼は家の門に手をかけていた。 彼の声に、慌てて開いていた口を閉じる。 私今、絶対アホ面してた。 恥ずかしい。 「何でもないです。ちょっとびっくりしちゃって。」 「はは、確かに。 この家見れば、ふつうの人はそうなりますよ。 俺も初めて見たときそうだったし。」 彼のところまで歩みを進めている間、 彼が門を開けて待っていてくれた。 「さぁ、どうぞ、、、、」 そう言って、中に入るよう促していた彼の表情が、 だんだんと曇っていく。 最初は頭の上に浮かんでいた?マークが、 確信へと変わったらしい。 「あの、俺、もしかしなくても、名前名乗ってないですよね?」 やっと気付いたんだ、この人。 「いや、名前だけじゃなくてその他諸々。 こんなんじゃ俺、完璧に怪しい人じゃないっすか。」 今までの自分の行動を思い出したみたいで、 とても焦っている姿が見ていて面白かった。 そういう私も、自己紹介すらしていないのだけど。 「申し遅れました。 西崎誠人(にしざき まこと)って言います。」 「私は、岸本智です。」 よろしくお願いします、と門の前で2人でお辞儀をする。 顔を上げて目が合うと、2人同時に吹き出してしまう。 少しだけど、緊張がほぐれた気がした。 「ちなみに、年は?」 「今年ではたちです。」 「じゃあ、同い年か。学部は一緒ですもんね。」 「いや、岸本さん文学部ですよね? 俺は、スポーツ科学部です。」 「え、嘘!?」 またもや意表をつかれて、さっきより大きな声が出た。 距離が近くなった分、私の声に彼も驚いた様子。 え、じゃあ、なんであそこにいたの?
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