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「えっと、とりあえず中に……って、あれ?あの!」
呆然と立ち尽くしている間に、
彼は家の門に手をかけていた。
彼の声に、慌てて開いていた口を閉じる。
私今、絶対アホ面してた。
恥ずかしい。
「何でもないです。ちょっとびっくりしちゃって。」
「はは、確かに。
この家見れば、ふつうの人はそうなりますよ。
俺も初めて見たときそうだったし。」
彼のところまで歩みを進めている間、
彼が門を開けて待っていてくれた。
「さぁ、どうぞ、、、、」
そう言って、中に入るよう促していた彼の表情が、
だんだんと曇っていく。
最初は頭の上に浮かんでいた?マークが、
確信へと変わったらしい。
「あの、俺、もしかしなくても、名前名乗ってないですよね?」
やっと気付いたんだ、この人。
「いや、名前だけじゃなくてその他諸々。
こんなんじゃ俺、完璧に怪しい人じゃないっすか。」
今までの自分の行動を思い出したみたいで、
とても焦っている姿が見ていて面白かった。
そういう私も、自己紹介すらしていないのだけど。
「申し遅れました。
西崎誠人(にしざき まこと)って言います。」
「私は、岸本智です。」
よろしくお願いします、と門の前で2人でお辞儀をする。
顔を上げて目が合うと、2人同時に吹き出してしまう。
少しだけど、緊張がほぐれた気がした。
「ちなみに、年は?」
「今年ではたちです。」
「じゃあ、同い年か。学部は一緒ですもんね。」
「いや、岸本さん文学部ですよね?
俺は、スポーツ科学部です。」
「え、嘘!?」
またもや意表をつかれて、さっきより大きな声が出た。
距離が近くなった分、私の声に彼も驚いた様子。
え、じゃあ、なんであそこにいたの?
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