第十話

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「ーーーーーーーーーーー。」 好きだ、と。 聞こえた。 気が、した。 頭の中で、今の言葉が理解出来ず、上手く紐解く事が出来ない。 「…………………ぇ………?」 震える声で小さく呟くと、俺を抱き締める隼人の腕に、更に力が込められた。 苦しいぐらいに抱き締められて、ほんの少し息がし辛い。 「渉、好きだ。めちゃくちゃ好きだ、どうしようもないくらいに。」 ……………………。 隼人、が。 俺を、 好き? ま、さか。 「……………気を、遣ってるなら……」 変に冷静な自分がいて、思わずそう呟いてしまう。 けれど。 「ふざけんな。誰が気なんか遣うかよ!こっちは……… こっちはもう、いっぱいいっぱいなんだよっ………!!」 少し不貞腐れたように言葉を吐き出すと、かき寄せるように、更に抱きしめられて。 「く、るし……………、」 「ごめん。でも、今は悪いけど、離せない。離したくない。」 ーーーーーーーー。 「………………な、に…………それ………………。」 じわり、じわり、と。 隼人の体温が、俺の体に移ってくる。 温かくて、優しくて。 まるで。 俺の冷え切った心を、溶かしてくれるようだった。 俺を、好き? ほん、とうに……………? 俺のこと、 好き、なの、かーーーーーーーー?
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