第十話

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どれだけ強く抱き寄せても、まだ足りなくて。 何度も、好きだと言った。 愛していると。 そして、逃げて、ごめんと。 何度も何度も、その三つの言葉を繰り返し。 渉の心に、どうか伝わりますようにと、願い。 こんなにも、愛しく思えるのは、渉しかいない。 渉だけが。 俺をこんなにも、無様な姿にさせる。 必死で愛を叫び、余裕が一ミリもないほど、その体を抱き締めて。 「……………ほ…………ん、と………………に?」 渉の声が、小さく震えながら、それでも必死に言葉を伝えようとする。 ほんの少しだけ体を離し、俺は渉の顔を覗き込んだ。 「好きだ、渉。」 「ーーーーー……………。」 真っ直ぐに目を見つめ、渉の驚く顔を、瞼に焼き付ける。 「……………泣い、てる…………隼人……。」 「あぁ。好き過ぎて、なんかもう、ヤバい俺。」 その、更に驚いた顔も。 そして、泣き出すその、顔も。 全部。 全部、忘れないから。 「………ーーーーーーっは、やとっ……………!!」 渉の腕が俺の首にまわされ、渉はそのまま、大声で泣いた。 これからも、ずっと。 俺の側で。 俺だけに。 色んなお前を、見せてくれ。
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