第十一話

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「お、俺、恒星とは付き合ってないからっ……!」 慌てて言葉を吐く俺に、隼人は優しく目を細めながら、ゆっくりと頷く。 「知ってるよ。今朝………話して来たから。」 ーーーーーーーーえ? 驚いて。 バクリと心臓が跳ね、怯えた表情で隼人を見つめる。 なに、それ。 話したって………。 なに? 「きちんと、話した。あの人にも、俺のせいで迷惑かけたから。」 「…………は、やと………。」 じっとりと、嫌な空気が俺を包み込む。 だって。 俺。 恒星と、キスした。 それに。 昨日、寝ようとしてた、し。 その事実を知って、もし隼人に嫌われたらどうしよう、と。 そんな不安が、頭の中いっぱいに広がってしまう。 「渉。」 「っ…………、」 ビクッと体を震わせると、少し切なげな目をした隼人が、俺をぎゅっと抱き締めた。 「全部、聞いたから。だからもう、怖がるなよ。大丈夫だから。」 「ーーーーー……………。」 その言葉で、きっと。 隼人も、俺と同じことを連想しているんだと知り。 自分が情けなくて、泣きたくなった。 「………ご、ごめ…………俺………恒星、と…………。」 「いいから、渉。もう、分かってるから。」 隼人は、どこまでも、優しい。 きっと。 俺の行動が、自分の責任だと感じているに、違いない。 「………ていうか、言うな。マジで……心底ムカついて、あの人殺したくなるから。」 「ーーーーーーはや、」 その言葉に驚いて体を離すと、隼人が微かに熱のこもった目で俺を見る。 「だから、ちゃんと俺のものになって、渉。他の誰も、もう手出し出来ないように。」 そんな風に。 我儘を言う、子供のような顔で見つめられたら。 やばい。 泣きそう。 「…………うん…………うんっ………。」 俺の知らない隼人が、いま目の前にいる。 嫉妬して。 我儘を言って。 俺を、独占欲という愛情で、縛り付けようとする。 ずっと、映りたかった、その目に。 確かに俺はいま、映っていた。
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