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「…………何で、泣いてるんだ?」
俺の顔を両手で包むように持ちながら、真っ直ぐな目で隼人が俺を見る。
俺としては、その触れている手のひらですら、
この心臓をおかしく波打たせる原因になるわけで。
ドキドキして半端ないから、離して欲しい。
体を重ねても、隼人に触れる事にまだ、全然慣れない。
「………つ、付き合えるのが………嬉し、くて…………。」
「……………。」
恥ずかしさのあまり視線を逸らすと、隼人が小さく溜息を吐いたのが分かった。
たったそれだけで。
また、不安がじりじりと俺を追い込もうとする。
これはもう、体に染み付いてしまった、俺の癖かもしれない。
自分は絶対見てもらえないという、今までずっと感じて来た絶望感が。
せっかく見てもらえた今でも、しつこく俺を闇の中へ落とそうとする。
呆れられた?
嫌いに、ならない?
「………ーーーーー襲われたいの、お前?」
意外な隼人の言葉に、思わず目を凝らしてその顔を見た。
え?
色気のある艶やかな目付きで、じっとりと俺を見ている。
「マジで勘弁してくれ。……ただでさえ、夜通し抱いた自分を責めてるのに………。」
隼人の親指が、下唇に優しく触れる。
「そんな顔でそんな事言われたら………また、我慢出来なくなるだろ?」
微かに眉をひそめながら。
隼人は優しく、俺にキスをした。
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