第十一話

6/9

1654人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
「っ………ふ……。」 優しく触れる唇が、頭の先まで痺れさせる程、気持ち良い。 さっきまでの不安が一瞬で消え去り、俺は自分の手を隼人の腕に添えた。 「………は、やと………。」 好きすぎて、名前を呼ぶだけじゃ。 キスをするだけじゃ、足りない。 もっと、触れたい。 抱き締めて欲しい。 「……っ…ダメだ、マジで……何で服着てないんだよお前………。」 堪えるような声が、更に俺の中の何かを刺激する。 ていうか。 だって、俺ずっと寝てたんだから。 服着てないのは、仕方ないし。 頭の隅でそんな事を考えながら、俺は隼人の首に腕を回す。 もっと、キスしたい。 「…やば、ほんと………逃げろ渉。ちょっと………マジで、ヤバい。」 近付く俺の顔を避け、理性の限り俺の体を引き剥がそうとする。 「隼人…………もっと。」 「ーーーーーっ……、」 離れたくなくて。 もっと、その体温を感じたくて。 歯がぶつかるぐらい、激しく唇を押し当てられても。 まだ。 足りなかった。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1654人が本棚に入れています
本棚に追加