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幸せそうに食べる渉から、目を離すことが出来ない。
失ってしまったと思った大事なものは、いま俺の目の前にある。
今度はもう、絶対に手放さないと。
そう心に強く誓い直し、渉の笑顔を見つめた。
「…………なに見てんだよ。恥ずかしいんですケド。」
ふと俺の視線に気付いた渉が、少し頬を赤くしながら俺を見返して来る。
そんな些細な仕草すら、愛しくて。
「………可愛いなと、思って。」
今まで、決して渉へ投げ掛けなかった言葉が、自然と口からこぼれた。
びっくりした顔のあと。
泣きそうに、微笑む。
その姿から、渉が一体どれだけ傷付いて来たのか、それを知る。
俺の弱さと、理不尽な願望が、渉を拒絶し突き放していた。
どんなに、辛かっただろうか。
それでも渉は俺の傍に、いてくれた。
ずっと。
俺の、傍に。
猛烈に抱き締めたくなって、右手を渉の顔へ差し出す。
「ーーーーっ………、」
戸惑いを見せながらも、
渉は俺の手のひらを避けることなく、その頬に触れさせてくれる。
温かい。
「……………好きだよ、渉。」
「ーーーーーー…………。」
真っ直ぐに見つめると、真っ直ぐに見つめ返して来て。
その目に涙が滲むのを確認しながら、優しく頬を撫でた。
「…………うん………………俺も、好き………だ。」
そう言って、泣きながら微笑む渉に。
俺は我慢が出来ず、キスをした。
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