第1章 不思議な置物 1/2

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「眠たいんだけど」 「先程、お願いされたら手伝うと言っていなかったかしら? 自分の言葉に責任を持てないとは最低だわ」 「初対面の相手に、そんなキツイ言葉を浴びせられるとは最高だな」 「その言葉は褒め言葉として受け取るわ。どういう状況でも自分を見失わずに信念を貫き通すのが私よ」 「……自己中とも言う」  何か言ったかしら、と威圧的に首を傾げる彼女。  小さな声で呟いた筈なのに、聞こえていたとは。耳の性能は素直に褒めよう。 「はぁ~、分かった。じゃあ、少しだけ手伝うよ。俺はその辺を探しとくから、……お前も記憶を振り絞って探しといて」 「随分適当ね。それに私の名前はお前では無いわよ。訂正して頂戴」 「はいはい。じゃあ、あちら側を……えっと……なんだ?」 「もしかして、私の名前を知らないの? 去年の学園祭で開催されたミスコンで優勝をして、期末テストで全教科満点を記録して、中学では陸上の神童と呼ばれていた、霧生紫音を知らないの?」 「知らねぇよ。何でそんな奴が俺と同じ学校なんだよ。それに自分自身の事をよくそんな風に語れるな」  神経を疑ってしまう。普通、自分で神童とか言っちゃうか? 何か恥ずいわ。  彼女は俺を通り越して窓際まで近づき、窓の格子に背中を預けてこちらを向き、堂々と誇らしく語る。
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