231人が本棚に入れています
本棚に追加
「リンみーっけ」
「遅い」
草木をかき分けラフな服装の雄仁は中心部へと足を踏み入れた。
「すみません。懐中電灯の光だけじゃあ足下を照らすのが精一杯で迷っちゃいました」
「何度もここに足を運んでるのでしょ? いい加減覚えなさい」
「どうにも道って物を覚えるのは苦手で」
「ばかね」
「自覚してます」
「それで? ここに来たのはくだらない雑談をするためではないのでしょ?」
「はい」
「聞いてあげるからその懐中電灯をこっちに向けないで。眩しいわ」
「あ、すみません」
懐中電灯を上に向け凜華の前に座り大きく息を吸い込み呼吸を整え心を落ち着かせた。
「単刀直入に言います」
「えぇ」
「好きです。僕と付き合ってください」
告白と言うにはあっさりとした決まりきった言葉だった。
「私と付き合うことがどういうことか分かってるのよね?」
「分かっているつもりです」
「つもり? 私は闇よ。全てを黒く染め上げる闇」
「闇?」
「昼を明るく照らす太陽でもなければ、夜を照らす月でもない。ましてや闇夜に輝く星でもなければ、見る者を笑顔にする虹でもない。それでもあなたは私を受け入れると言うの?」
リンがどうして自分を闇と言うかは分からない。だけど、そんなことは関係無かった。
「はい。だって僕が好きなのはそんなリンなんですから」
「っっっっ!」
思いがけない言葉に顔が赤面した。
見られたくない。
そう思った凜華は手近にあった小石を投げ懐中電灯の豆電球を破壊した。
「あ、ちょっと! なんてことするんですか!」
辺りは暗くなりお互いの顔も姿も見えなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!