第2章 父親(おとん)の暴力

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「ただいまぁ。」  しん……と静まり返る家に昴の声が響く。ちらりと横目で見るキッチンの時計、時刻は午後1時を少し過ぎている。  ドサッと鞄を置き、キッチンに向かう。机にはおばあちゃんが置いてくれたチョコレート。それをふたつ手に取ると、丁寧に包みを剥がし舌の上で転がす。 うまぁ。 「やっぱチョコはしみるわぁ……」ほぅっと甘いため息をつき思わず目を閉じる。    ずっとこうしていたいけど、そうもしてられない。「よいしょっと」時刻は午後1時20分。  この時間帯、おかん達は客入りのいい時。今日も忙しく焼き鳥を焼いているんかなぁ……おとんも新しい仕事うまいこといってるんかなぁ……とツラツラ考えながら、晩御飯の用意をする。  今日の晩御飯は、そぼろチャーハンと小松菜と人参のスープそれから冷奴。僕の大好物! これは欠かせない。  手際はお世話にも上手いとは言えないが、一生懸命にお米をとぎ野菜を千切りする背中はまさしく頼れるお兄ちゃん。  こうして、毎日仕事を頑張る家族を陰ながら支える日々を送る。  少しでも、家のためにと  帰ってきて、少しでも喜んでくれたら良いなと思いながら。
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