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険しい山の頂上、うっすらと優しい色に染まる空。辺りは、見たことの無い不思議な雲かゆっくりと移動していた。
『ジャリ……ガリッ……』
渦巻く霧の間、何かが動いている。
『グルルルル…………グルル……』
鋭い爪を立て岩場を歩く力強い足。ギラッと光る瞳は見るものをたじろかせるほど。
『ガォォォオォォッッーー……!』
腹の底に響く雄叫びをあげているそれは、ひとまわり程小さいが力強く凛々しい金色の毛の虎だった。
******
“チチッ! ……チチチッッ”
「……ん……朝?」
鳥のさえずりが聞こえゆっくりと夢から覚めた。徐々にハッキリしていく視界は、よく見慣れた我が家の天井が広がっている。
ふぅ……
よく似合うショートカットをかき上げる女性は、どことなく安心する木目を仰ぎ、愛しい我が子を抱いた腹にそっと手をあてがう。
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