プロローグ

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「はぁっ……はぁ……」痛みで呼吸が荒くなる。 「はっ……た、……たかちゃん!」  懸命に助けを呼ぶ母。その声に反応し、すぐ近くで『ガタタッッ』と音がしバタバタバタッッと急ぐ足音が向かって来た。  スパン!とふすまが開き、「大丈夫か?!」と駆け込んで来たのは、腹の子の父親。 「う……お腹が……あっ、赤ちゃんっ……」 「産まれるんやな!」少しの焦りも見せぬよう、冷静に問う父。母はそれに苦しそうに頷く。 「よっしゃわかった! すぐ、産婦人科行くで!」 バタバタッッ……ガチャ、ブロロロロ……  静かな夜にせわしなく響く音を、小鳥のさえずりが柔らかく追いかけていく。 ******  昭和〇×年 5月17日 午前5時17分 「ホンギャァーーホンギャアーーッッ ホンギャアーーッッホンギァャアァ!」  元気な命が、朝の光と共にキラキラと産まれた。 *****  虎が連れて来てくれた真新しい命。  無事、出産を終え安堵の表情で愛しい我が子に第一声をかける。 「お母ちゃんですよぉ。やっと会えたねぇ……生まれてきてくれて有難うねぇ」  ぷにぷにのほっぺたを優しく撫でると、小さな唇がかすかに動く。
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