プロローグ

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 父の孝男(たかお)は、赤ちゃんの写真をとるっ! と言って家にカメラを取りに行っている。朝からありがとう、たかちゃん。  それにしても「か……可愛すぎっ!」漏れた声が思わずうわずる。  紅色の頬や小さな手に、自分が親になったことを改めて実感した。  それと同時にざわつく心。 私、ちゃんとこの子を守りきれるかな……  親という責任感と、ちゃんと無事に育て上げれるかという不安が押し寄せる。 う゛……アカンアカン! うちのおかん聞いてたらしかられるわ……「案ずるより産むが易し! マイナスに考えてたらきりないで!」って。  自分の母親の口癖を思い出し心のモヤモヤがすぅーーっと引いていく感覚がした。 「よしっ! めいいっぱい可愛がって、精一杯お母ちゃんさしてもらお♪」自分の頬をパンパンッと叩き不安を笑顔で飛ばす母親。  もう一度我が子に目をやると、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。  その愛らしい寝顔に癒され、母も眠りにつく。これからの楽しい未来にワクワクしながら。  だが運命は残酷で冷徹。  未だかつて、誰も知らなかったであろう波乱万丈な人生を、小さな命は体験する。その子の名は吉川 昴(よしかわ すばる)  金色の虎に招かれし者。
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