第1章 痛くない理由

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 ヒソヒソ…… 「昴君の親って、焼き鳥屋さんなんだって」 「あ、知ってる! それってヤーコーのする店やんなぁ、おかん言うてたわ!」 「っ!! あほっ声でかいわっ」 「やばっ! ごめんごめん」  ヒソヒソ…… 「とにかく、あんまり関わらない方が良いと思う……」 「うん、ウチもそう思う」  西成小学校の二階、4年B組の教室は今日も『しょうもない会話』が飛び交っている。  人の気持ちなんて考えもしないクラスメイト。特に女子は、自分より下の人間(正しくは下だと勘違いしているんだが)を悪く言い合わないと気がすまないらしい。  今回ターゲットにされたのは昴。  ほんの些細な雫が大きな波紋となって広がるように、噂は広まり昴を孤立させていく。 どんだけ自分勝手やねん。しかも聞こえてるし……それにヤ〇ザちゃう…………まぁ、それはあながち間違ってないけど。  教室の隅で、机に突っ伏した状態の昴はぶつぶつツッコミを入れている。もちろん心の中で。  目のやり場を気にしなくて済むこの素晴らしい体制を2、3日前に発見した昴。それからの休憩時はこの状態。 「お前……起きてるやろ」 気がつけば声が降ってきていた。周りには何人かの人影を感じる。……まぁ、ゆっくり寝させてくれるわけないか…… 「おい、デブ」 「チービ」 「お前、キショイんじゃよ……」 「っていうか、はよ帰れよ」 あ゛ーーうっとおしい……  うつ伏せの状態でイライラしながらも、じっと動かない昴にしびれを切らした男子どもが呟く。 「無視しくさって……こいつ、しばいたろ。」
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